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明治日本の薩摩革命遺産④

過去と未来のエネルギー

集成館事業ではその土地に合わせたエネルギーを使っている。薩摩では石炭が供給されないため、優れた白炭を作った。また反射炉で大量の銑鉄を溶かし、鋳型に流しできたものに大砲の穴を開ける。その動力は水力であった。同じ頃、規模は違うが、約2万km離れた地球のほぼ反対側に位置するブラジルでもペドロ2世が水力を原動力とし、大きな炭焼き窯、反射炉を備えたイパネラ製鉄所を作った。これら過去の事例は何に繋がるのか。

 

1988(昭和63)年に鹿児島大学工学部の先生方が鹿児島県内に水車がいくつあるのかという調査を行った。結果、800近くの水車が存在していた。発電用が8基、横川では鉱石を砕くための水車が多く、南薩には骨を砕いて肥料にする骨粉用の水車、知覧にはたたら製鉄の跡や水車があり、鹿児島市内でも中山や川上に大きな水車があった。シラス台地を流れる中小河川は水車を利用するにはとても適した地形で、調査当時は800という数の水車が存在し稼働していた。現在、これが見直されて、肝付町の辺塚などに小水力発電が作られている。有明町などは自分たちで用水路に小型発電所を作っており、メンテナンスも自分たちで行っている。地域コミュニティの活性化のためにも、また災害時の備えとしても、小水力発電は有効である。これからはこうした取組が各地で行われることが必要である。

明治日本の薩摩革命遺産④

原口泉

県立図書館長・志學館大学人間関係学部教授

専門は日本近世史・近代史であるが、南九州(特に薩摩藩)や沖縄(琉球)の歴史に詳しい。 専任講師時代より各種テレビ番組の時代考証・解説(近年ではNHK大河ドラマ「篤姫」の時代考証)や多数の公職を務める。

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