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「桜島を持っとるが!」人間味あふれる温泉地の西郷さん

温泉好きであったと伝えられる西郷隆盛。

確かに西郷さんは鹿児島県内各地の温泉地にその足跡を残している。その中で特にお気に入りだったのは霧島市の日当山温泉。史料によると明治元年(1868年)から明治9年(1876年)の間にたびたび訪れ、逸話も数多く残されている。

西郷さんが日当山を好んだ理由として『日当山温泉南洲逸話』に以下のようにある。「日当山は霊峰高千穂を東方に望み、秀麗桜島は湾上にけぶり、周囲は城址や古刹に恵まれた幽境の地で猪兎を追い、天降川の清流で漁に興じた。さらに俗塵を離れて良質のお湯に疲れを癒し、楽天地の感があった。」一日中日当たりが良かった事からその名がついたとされる日当山。のどかな風景広がる温泉地で西郷さんは兎狩りや魚釣り、時には角力(すもう)を楽しみ、温泉で汗を流していたようだ。

当時の日当山温泉は元湯と呼ばれた共同湯がひとつで、瓦葺ではあるものの四方板塀、浴場は石畳、湯壺の底は土間という簡素な浴舎であった。男女混浴で多くの浴客がありアカもずいぶん浮いていたが西郷さんは平気で入っていた。元湯で地元のおばあさんと入浴した際の逸話に次のようなものがある。

明治初年頃、断髪令が施行されたが地方には旧藩時代の風習が急速には広まらず、髷を結っている人も未だ多かった。この頃の西郷さんは断髪坊主頭で一緒に入ったおばあさんは僧侶と思ったそうだ。色白の立派な肥えた体に断髪頭の西郷さんに「きれいな坊さんじゃ」と褒め「寺を持っちょいやっとなあ?(寺を持っていらっしゃるのですか?)」と尋ねた。西郷さんはニッコリと愛嬌たっぷりに「桜島を持っとるが」と答えたそうだ。日当山温泉で心身ともに穏やかに時を過ごしていた西郷さんのおおらかな人柄が伝わってくるエピソードである。

【参考】日当山温泉逸話

「桜島を持っとるが!」人間味あふれる温泉地の西郷さん

六三四

鹿児島温泉観光課『六三四城』HP管理人。 現在離島を含む鹿児島県内の温泉1000カ所以上を実際に訪問し情報を発信。

温泉ソムリエ協会師範
 4つ星温泉ソムリエ(師範・インストラクター・アンバサダー・マスター)
鹿児島県公衆浴場入浴料金審議会委員
指宿温泉コンシェルジュ・マイスター
温泉入浴指導員
温泉保養士(バルネオセラピスト)
温泉観光士
温泉観光実践士
温シェルジェ
日本温泉地域学会会員
日本旅のペンクラブ会員

温泉地の小中学生を対象とした「浴育」を企画し県内各地で浴育授業も行っている。
温泉TV番組、温泉雑誌の企画、監修を行いMBCズバッと鹿児島、KYTかごピタにも出演。
温泉紹介だけでなく地域とメディアを連動した「温泉地域おこし」プロデュースも行なう。

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