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いま×薩摩vol.3

明治維新と世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」

「明治日本の産業革命遺産」が2015年7月に世界文化遺産に登録されてから1年半余りが経ち,来年の明治維新150周年を控え,県内外の多くの方々に鹿児島の世界文化遺産を訪れていただき,その地域の魅力にも浸ってもらいたい。

明治維新(1868年)は「明治日本の産業革命遺産」が対象とする年代(1850年代~1910年)に含まれることから,そのストーリーを知ることで明治維新への理解が深まると思う。「明治日本の産業革命遺産」は九州・山口を中心に全国8県11市にわたる23の遺産で構成され,遺産群全体で,幕末から明治期のわずか60年ほどで,西洋の先進的な技術と日本の伝統的な匠の技が融合し,急速な産業の近代化を果たしたという世界遺産の価値を表している。鹿児島の構成資産は,旧集成館や寺山炭窯跡,関吉の疎水溝の3つであり,これらは第11代薩摩藩主島津斉彬が興した,産業国家日本の原点とも言える集成館事業によるものである。中でも,私は四季折々の関吉の疎水溝沿いの遊歩道を歩くのが好きだ。春は桜,6月頃はあじさい,9月頃はシャクナゲに彩られる。田園風景を眺めながら実方神社まで今も生きている疎水溝を確認しながら歩いていくと,江戸時代の技術者の地形や地質を理解する能力や測量技術が並外れたものであったことを実感する。関吉の疎水溝の取水口を御覧になったあとは,遊歩道をゆっくりと散策し,田園風景を眺めながらくつろぎのひとときを過ごしてみては。

いま×薩摩vol.3

田中 完

鹿児島県企画部世界文化遺産総括監

1984年4月,鹿児島県庁に入庁。「明治日本の産業革命遺産」の関係では,世界文化遺産登録を目指す取組のきっかけとなった鹿児島県主催のシンポジウムが2005年7月に開催された翌年度の2006年度(当時企画課)から関わっており,2013年度から世界文化遺産課長に,2015年度からは世界文化遺産総括監に着任し,今年度で通算9年目。

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