いま×薩摩vol.17
今こそ、現代版「薩摩スチューデント」
今から152年前、国禁を犯しながらも英国留学を果たした若き薩摩スチューデントたち。帰国後、彼らは産業、教育、文化、軍事など様々な分野で活躍し、近代日本形成の礎を築いた。
その中の一人、森有礼は23歳の若さで日本初の駐米代理公使に就任している。翌年、日本人の西洋に対する偏見や誤解を取り除き、日本国家の文明の発展と向上を目的とした本、「米国における生活と資源」を刊行している。この中で森は、文明国の根源は「教育制度の確立」にあり、人間の中身も変革すべきだと訴えている。若くして海外を経験し、あらゆる分野の見聞を広め、常に外から日本を見ていたからこそできる主張であった。
その後、森は初代文部大臣に就任し、これまでの主張を実現すべく、自らが先頭に立ち教育改革を遂行した。また、就任後「自警」と題して「文部省は全国の教育や学問に関する仕事をするところで、その権限と責任は非常に大きいため、命がけで仕事に当たらなければならない」と書に残している。皮肉にも、森は急進的な主張が仇となり、国粋主義者に腹を切られ最後を遂げている。
さて、来年は明治維新150年を迎える。この大きな節目に、先人たちの偉業に光を当て、紐解くことはもちろん重要である。併せて、今を生きる我々が150年後に向けて何ができるのかを探ることはさらに重要ではなかろうか。森の言葉を借りれば、「今を生きる我々の中身に変革が求められている。」
ぜひ、この機会が一過性のイベントだけでなく、人材育成や地方創生など幅広い観点で捉え、将来を担う若者たちが郷土に根付き、ステップアップできるような取り組みが生まれることを期待したい。
奥ノ園 陽介
いちき串木野市 観光交流課 職員
2010年、「薩摩藩英国留学生記念館」担当(建設・資料収集)として着任。2014年の開館、2015年の渡欧150記念事業に携わり、現在に至る。
夢は、いつか薩摩スチューデントが歩んだ足跡を辿る旅に出ること。